左から、残間里江子さん、キャシー中島さん

キャシー はい。御殿場では17年暮らしましたが、田舎暮らしは体力もいります。そこで50歳を前に家を売って東京に引っ越すつもりでしたが、七奈美から「私たちの田舎なくなっちゃうの?」と言われて。この子たちはここで大きくなったんだと気づき、残してキルトのハウスミュージアムにしました。もし長女からそう言われなければ、手放していたでしょうね。

残間 写真で拝見しましたが、すごく素敵な空間ですね。

キャシー 庭を整備して小さな結婚式もできるようにして、「キャシーマムがみんなを結びつけます」みたいにしよう、と。ステイホーム期間中に構想が生まれました。

残間 さすが! すべてに前向きですね。

キャシー がんばっても、活躍できるのはあと10年。その10年間に何をしたら、みんなに「楽しい」「よかった」と思ってもらえるのか。今まで全国15ヵ所にある教室を飛び回り、忙しくて考える暇がなかったけれど、ステイホームのおかげでじっくりこの先のことを考えることができました。リモートのキルト教室も始めたし、「キャシーマムのリモート・コレクションショップ」も始めるつもりです。

残間 私は新型コロナウイルスの流行をきっかけに、31歳になる息子とファミリーディスタンスができました。息子は猫2匹と暮らしていて、ある日猫を見せに来たので何気なく「結婚はしないの?」と聞いたら、「しないよ」と軽く言われた。

「そういうことを言うとタダじゃおかない」みたいな空気があるから普段は言わないようにしているのに、私もつい口走ってしまったのですが。でも、うるさそうにされたので、「あなたと次に会うのは霊安室ね」とメールを送りました。(笑)

キャシー 母親の気遣いが煩わしい年齢なのね。

残間 でも、はたと気づいたの。息子は今、自分中心に生きるべき時期なのだと。私自身を振り返っても、20歳くらいから親に仕送りをし、40代で親のために小さな家を建てた。そこから父ががんになるまでのわずか8年くらいが、親を意識せずに自分のペースで生きることができた期間だった、と。

キャシー お父様を見送って間もなく、お母様の介護が始まったわけですものね。

残間 10年後には私は80歳。その頃には息子も私のことを意識せざるをえなくなる。だったらせめて今は、「親はいない」くらいに思わせているほうがいい。こっちも、子どもは南アフリカあたりにでも住んでいると思おう、と。

キャシー きっとそれが残間さんと息子さんにとって、楽な方法なんでしょうね。