『家族じまい』(集英社)桜木紫乃
正賞── 賞状
副賞── 100万円、ミキモトオリジナルジュエリー
10月14日(水)東京會舘にて、第56回谷崎潤一郎賞と第15回中央公論文芸賞(中央公論新社主催)の贈呈式が行われました。谷崎潤一郎賞は、磯崎(崎はたつざき)憲一郎さんの『日本蒙昧前史』(文藝春秋)、中央公論文芸賞は、桜木紫乃さんの『家族じまい』(集英社)が受賞。
感染症予防を考慮し規模を縮小して行われたこともあり、会場はなごやかな雰囲気に。選考委員を代表し、谷崎賞は川上弘美さん、中央公論文芸賞は鹿島茂さんによる講評が代読され、賞状と副賞が二人に贈られました。
副賞のミキモトオリジナルジュエリーはミキモトの協賛を受け、1962年の第一回「女流文学賞」から贈呈されている歴史ある賞品。その後、「婦人公論文芸賞」を経て今日の「中央公論文芸賞」に至るまで、50年以上にわたって受賞のシンボルとなってきました。2009年からは谷崎賞の副賞としても、贈られています。今回、磯崎さんにはピンブローチが、桜木さんには指輪がそれぞれ贈呈され、壇上でさっそく身に着けた桜木さんは、最高の笑顔を見せていました。
贈呈式で挨拶に立った桜木さんは次のように受賞の喜びを語りました。
「賞を目指して書いているというわけではなかったので、報せを聞いたときはとても驚きました。そして7年前に直木賞をいただいたときは一滴も涙を流さずに乗り切ったのですが、今回は報せを聞いて、またさきほど鹿島先生の選評を伺って、こんなに泣いてばかりいるのか……なにか面白いことのひとつもやってやろうと思って来たのに、本当に悔しいです。(笑)
『家族じまい』というタイトルを考えたのは『小説すばる』の担当者で、今、桜木にこれを書かせなければと思った彼女の選択は間違いではなかったし、なぜこんな苦しいものを書かねばならなかったのか、それはたぶん今だからだったんだろうなと、鹿島先生の選評を聞いて改めて思いました。
私にとっての家族じまいはいつだったろうかと考えると、どうやら小説を書き始めたときであったような気がします。『雪虫』というオール読物新人賞に送った短編小説から、私はずっと地方の家族というものを書き続けてまいりました。そして担当が機を見て投げた球『家族じまい』で、またこうして高い席にあげていただいて大変感謝しております。これからも北海道の片隅で淡々と小説を書いてまいります。今日は本当にありがとうございました」
贈呈式の選評、受賞者のスピーチはこちらで公開されています。