関係が終わったのに処分できずにいると
地曳 ファッションと人間関係というのは重なり合う部分があって、「服」と「男」も、実は似ています。相手との関係がうまくいっているときは、馴染んでいてそれが普通なのに、あるとき突然、違和感を覚えてしまう。好きで一緒になった夫でも、「なぜこの人を選んでしまったのだろう」と不思議に感じるときがあるのと同じで。(笑)
村山 お互いが少しずつ変わっていることに気づかずに、飽和に達したある日、“もう着られない服”になる。『ダブル・ファンタジー』という作品にそういうセリフを書きました。モデルになった人には申し訳ないけど。
地曳 感謝して別れられたらいいですね、服も男も。理想論かもしれませんが。
村山 すごく愛した服かもしれないし、着れば気持ちが上がったかもしれない。けれどもう着られなくなった。しばらくは撫でていたけど、それを置いて次へ行かなくちゃいけない。そういう時期が来たということ。
地曳 50代がおしゃれに困る理由のひとつは、服があり過ぎて何を着ていいかわからなくなること。それは、もう関係が終わってしまった服を上手に手放せないせいでもあります。だから私は、不要な服は処分し、必要最低限のものに絞ってクローゼットに並べることを提案しています。もう愛していない男とは付き合っていけないように、自分の気持ちを上げてくれなくなった服を、この先、着ることはありません。
村山 私は付き合う男性によって着るものが変わるほうなんです。その人との会話の中で「あぁ、この人は私のこういう部分が好きなのだな」と感じると、彼に好かれたい、喜ばせたい思いが湧いてきます。だからフェミニン系が強く出たり、かっこいい系が前面に出たりと、恋愛とともにファッションの変遷がありました。付き合っている間は、その人好みの服が中心になりますが、別れるとクローゼットに服だけが寂しく残される。
地曳 今日のファッションから想像すると……今の恋愛はリラックスしている感じでしょうか?
村山 今のパートナーとはかなり落ち着いた関係で、これまでで一番ラクかな。穏やかで冷めない恋愛があるのだと知りました。ただ、彼はぽっちゃりした女性が好みなので、合わせ続けるかどうかが目下の課題です。(笑)