児童福祉司は、心理や福祉の専門職とは限らない
虐待事件が起きるたびに児相の人手不足が報じられるが、「最大の問題は児童福祉司の権限が大きすぎることだ」と山脇さんは言う。地方公務員が人事異動によって配属される児童福祉司は、心理や福祉の専門職とは限らない。にもかかわらず、個々のケースの進め方や心理診断をするか否かもその裁量に任されることを、山脇さんは危惧してきた。
学校のあり方も問われる。公立小学校のある養護教諭は、近年、学校から児相などへの虐待通報は徹底されるようになってきたが、児相での対応にはさまざまな問題が山積していると洩(も)らす。
「身体的虐待があっても、大けがでなければ、一時保護を解除され、家庭に戻されてしまうことが多いのです。ゴミ屋敷のような自宅から不衛生な服装で学校に通う子、食事を与えられない“ネグレクト”を受けている子でも、『さし迫った危険がない』と判断されれば、『見守りを継続』としつつ、放置されてしまう。児童福祉司は異動も頻繁なために引き継ぎに不備が起こりやすく、いつのまにか『ケース終結』と判断され、忘れ去られる場合もある。熱心な人もいれば、投げやりでやる気のない人もいます。デリケートな問題を扱う専門性の高い職種だけに、ある程度の資格取得者が担ってほしいのですが」(養護教諭)
また、公立校では子どもの心のケアに関わるスクールカウンセラーも常勤体制ではなく、情報把握が難しい現状もある。
「最近では、親がしっかり働いていて、子どもも明るく登校していても、怒鳴り声が聞こえたということで近所の人から学校へ通報されるケースが増えています。ところが子ども本人は怒られただけだと思っていたり、しつけか虐待かの判断が微妙なケースもある。学校側と保護者とが敵対関係になるのは子どもにとってもマイナスなので、そのリスクを冒しても踏み込むべきかどうか、見極めが難しくなっていますね」(養護教諭)