表沙汰になるケースは氷山の一角
17年度、全国に210ヵ所ある児童相談所が対応した児童虐待の件数は13万3778件にのぼり、過去最多を更新した。児相に寄せられる通報や相談、警察からの通告が増え、虐待で死亡した子どもが16年度中に77人いたことも公表された。虐待の質もこの10年ほどで変化していると、前出の山脇さんは言う。
「体に傷跡を残さないような虐待がほとんどです。シャワーによる水責めや、食事を与えない、言葉の暴力を浴びせるなど。また、風呂場や玄関など自分の目に触れない場所にいさせるなど、より陰湿化しています」
18年に目黒区で起きた5歳女児の虐待死事件に続き、今回の心愛さんの事件は社会を震撼させたが、こうして表沙汰になるケースは氷山の一角。私たちの身の回りにも危うい子どもがいる可能性があるとしたら、日々の生活で何かできることはないのだろうか。
山脇さんは、近所で気になる子や街をうろついている子、さらに子育てがつらそうな母親にも声をかけてほしいと言う。まさか虐待ではないだろう、と判断せず、様子がおかしいと感じたらためらわず通報することを勧める。
たとえ小さな目配りでも、それが子どもたちの命を救う一助になるかもしれない。今や虐待は決して他人事ではなく、どこにでも起こりうる。助けを求める子どもたちの微かな声に応える大人であることが、私たちの務めなのだと思う。