亀屋良長「烏羽玉」

つやつやとした漆黒の小さな菓子は、万葉の古歌にも登場するゆかしいネーミング

烏羽玉とはアヤメ科の植物、ヒオウギの黒い実のこと。うばたま(ぬばたま、とも)の語は、和歌の「黒」「夜」「夢」などにかかる枕詞としても使われ、「ぬばたまのわが黒髪に降りなづむ天あめの露霜取れば消け につつ」(『万葉集』詠み人知らず)など、古いにしえより親しまれてきたおもむきある言葉です。

亀屋良長の烏羽玉は黒糖入りの餡玉を寒天でコーティングしたつややかな菓子。創業当初から二百年以上、この店の代表銘菓として親しまれてきました。なめらかな口当たりのこし餡は黒糖の香りが特徴で、日本最南端に位置する波照間島(はてるまじま)産のサトウキビを使用しています。小粒な中にぎゅっと旨みが閉じ込められていて、抹茶や焙じ茶などのお茶との相性はもちろん、酒の伴としても活躍しそうな濃厚な味わい。

物思いに耽る夜長のひとときを、漆黒の烏羽玉とともに過ごすのもまた一興です。