松屋常盤「味噌松風」

御所南の老舗が伝える一子相伝の味は、
謡曲『松風』から名付けられた由緒ある菓子

京都御苑の南側、堺町御門から少し南に下がったあたりにある松屋常盤(まつやときわ)は、三百六十年以上続く歴史あるお店。十六代続くこの店の名物は、味噌松風と呼ばれる菓子で、西京味噌(白味噌)に小麦粉と砂糖を混ぜて焼いたもの。一見カステラにも似ていますが、味噌の風味と生地のもっちりとした食感が特徴です。

創業の頃から公家や茶人に愛好されてきたというこの菓子。名称は謡曲の『松風』にちなみ、茶聖千利休と同時代を生き、茶の湯に縁の深かった大徳寺の名僧・江月宗玩(こうげつそうがん)によるものと伝えられます。

こんがりと香ばしく焼きあがった表面と、ほの白い裏側の生地を、謡うたいの中の「浦寂し、鳴るは松風のみ」という言葉にかけたという遊び心ある命名。

お茶菓子らしいざんぐりとした風情ですが、あと引く味わいで、一箱ペロリというファンも少なくないようです。