とらや 京都一条店「栗粉餅」

御所の御用をつとめた老舗が作る栗菓子は、
新栗をふんだんに使ったこの季節ならではの味

実りの秋の味覚で外せないのが栗。この季節、さまざまな栗の菓子が登場しますが、丁寧に実を裏ごしし、そぼろ状に作るきんとんは、滑らかな口当たりや栗の香りが楽しめて嬉しいもの。とらやの栗粉餅は、栗と白餡を合わせたそぼろを求肥包みの餡につけた、手の込んだ上生菓子です。

栗粉餅といえば、栗の産地の信州などでは、餅に栗の粉をまぶした素朴な菓子を指します。長らく御所の御用をつとめ、京都御所近くに店を構えるとらやでも、元禄13(1700)年の史料に見える「栗粉餅」はこの形であったと考えられます。その後、大正時代の見本帳では、現在のようなそぼろ状のきんとんの絵が描かれているとのこと。

そんないわれに興味を覚えつつも、ともかく新栗の豊かな味わいを楽しめる、毎年待ち遠しい一品。季節限定ゆえ、タイミングを逃さずにいただきたいものです