右から、宮藤官九郎さん、古田新太さん、清水ミチコさん(撮影:大河内禎)
鼎談のゲストは演劇界の盟友、宮藤官九郎さんと古田新太さん。清水ミチコさんとのつきあいは長いものの、3人揃っての仕事は15年前に放送されたドラマ『タイガー&ドラゴン』だけ。おしゃべりが盛り上がるにつれ浮き彫りになるのは、脚本家/役者としての性なのか、2人の持って生まれた不思議な力なのか――(撮影=大河内禎)

無観客のなかで芝居をして

清水 『タイガー&ドラゴン』での、古田さんとの漫才師夫婦役、いまだに「あれはよかった」って褒められるの。

宮藤 下敷きになっている「厩火事」自体がいい人情噺ですしね。

古田 奥さんが、自分のことを大事に思ってるか試すんだよな。

宮藤 長瀬(智也)くんの高座が終わったあと、客席にいた夫婦がみんなにお辞儀して、そのまま清水さんが遺影になる――何度見ても毎回あそこで泣けるって、確かによく言われます。

清水 私だって、自分なのにグッときちゃって。(笑)

宮藤 あれ5話なんですけど、ときどきあるんです、評判のいい回が5話あたりにくることが。『木更津キャッツアイ』のオジー(古田さん演じるホームレス)が死ぬのも5話だったし。

古田 普通は最初がよくて、中盤たるむじゃない。

宮藤 まあ、初回が一番よくないとダメですよね。ドラマって1、2話はチーフ監督が、3、4話は別の人が撮って、5、6話あたりでまたチーフ監督が戻ってくることが多いんです。現場が慣れてきたり、作品を客観的に見られるようになっていたり、いい作品に仕上がる理由はなにかしらあるんでしょうけど。

古田 で、宮藤くんはその頃調子が上がってくる。

宮藤 いまだに加減がよくわかんないですよ。

清水 そういえばこの間、NHKで『JOKE』っていう単発ドラマをやってたでしょう。

宮藤 あ、観てくださったんですね。謹慎中のお笑い芸人が、ネット番組を配信することからはじまるホラーもので。リモートドラマっぽいし、いまっぽいテーマなんですけど、企画は去年のうちに出してました。

清水 そしたらコロナで、芸人のYouTube 配信が当たり前になったんだね。三谷幸喜さんの『大地』っていう舞台も、芝居を禁じられた俳優が出てきていまを彷彿とさせる話なのに、台本を書いていたのは去年だったわけでしょう。脚本家ってなんなんだろう。妙に鋭い勘があるのかな。

宮藤 うーん。別に狙ったわけでもないんですよね。

古田 こんなことが起きたら面白いなとか、イヤだなとか、大事件だなってことを考えるのが、日常になってるからじゃない?

清水 確かに言い当てたっていうより、察知したっていう感じがする。すごいなあ。そうだ、2人とも無観客の劇場で企画をやったみたいだけど手応えはどうでした?

宮藤 WOWOWが劇場別で番組をつくる『劇場の灯を消すな!』もあったし、古田さんは、KERAさんとのタッグで『PRE AFTER CORONA SHOW』の配信もしていましたよね。

古田 正直キツかった。

清水 お客さんの反応がないって、そんなに違うんだ。