「正しい日本語」なんて存在しない
タツオ 中村さんのように、新しい言葉に出会った時に、それを楽しめる心のあり方は大切だと思います。ともすれば、「正しい日本語」を使えないのはバカだというような言葉ハラスメントも起こります。正しい日本語なんて存在しないという見識を持ったほうがいいと思うんです。
中村 そうですね。特に敬語は日本語特有で文化的価値があると信じている方が多い。価値ある敬語を正しく話せる私は偉いというプライドを刺激されると、異質なものに対して感情的に批判しがちなんです。
タツオ 自分が受けた時代の教育で教わった言葉だけを正しいと思い込んでしまうんですね。だからいつまでたっても、「最近の若い者の言葉遣いはなっとらん」と繰り返される。スマホのアプリをアップデートする必要があるように、言語も実際の対人関係で表現できなければ、アップデートしていけばいいんですけどね。
中村 そもそも今の近代日本語は明治に入って便宜的にできたものです。江戸以前はそれぞれの方言が強くて互いに意思疎通ができなかった。それを明治になって急に統一しようとして、「国語」が生まれただけで。しかも、なかなか広まらないものだから、無理やり全国の小学校で教え込んだ。国語は元来、上から押し付けられたものとも言えます。でも、それとは別に私たちには生活の中で使ういろんな言葉があっていいんですよ。方言を筆頭にね。