「ッス」は便利で万能。(イラスト:小迎裕美子)
「いいっすね」「そうっすか?」「マジヤバイっす」──新しい言葉や表現がどんどん生み出される一方で、こうした言葉を不快に思う人もいるだろう。社会言語学者の中村桃子さんと、芸人であり大学講師も務めるサンキュータツオさんに、新語が生まれる背景や社会的な意味、面白さについて語ってもらった(構成=玉居子泰子 イラスト=小迎裕美子)

「おっす」→「うっす」→「ちいっす」

サンキュータツオ(以下、タツオ) 中村先生のご著書、『新敬語「マジヤバイっす」』楽しく拝読しました。語尾につく「~ッス」という一つの表現を取り上げて、新しい丁寧体「ス体」と名付け、一冊の本に仕上げているのがとても興味深かったです。さらに敬語だけでなく社会がどう変わっていくかがわかりやすく書かれていて、とても素敵な本だと思いました。

中村桃子(以下、中村) わあ、サンキューさんにお墨付きをいただけたようで嬉しい。あ、「先生」じゃなくて中村さんでお願いしますよ。

タツオ はい(笑)。でも、若者が「ッス」を敬語として使うことに、違和感を覚える世代がいるのも確かですよね。本にもありましたが、「『ッス』は丁寧語ですか?」というインターネットの投稿に対し、多くの人が「バカ丸出し」「育ちが悪い」などと嫌悪感をむき出しにしています。中村さん自身は「ッス」に対してどのような印象を持っていましたか?

中村 教え子たちが使っているのを聞いたのが初めですけど、面白いな、可愛らしい表現だなと感じました。悪い印象はまったくなかったです。

タツオ 僕も、高校時代に運動部にいた時から「ッス」は気になっていました。当初は、柔道部で使われる「おっす」の略かと思ってたんですが、だんだん「うっす」とか「ちいっす」と変化していくのが興味深い現象だと思っていましたね。