弓指寛治さんが描いてくれた山の中を彷徨う末井富子(写真提供:末井さん)

お前が死んだら、お墓はどうするんだ〜〜

実を言うと、ぼくはスーパーに行くのが大好きで、それがストレス発散にもなっていました。開店直後のスーパーに行くと、お爺ちゃんたちが真剣な顔でカートを押してあちこち動き回っています。おそらく開店前から並んでいたと思います。ぼくと同じようにスーパーが大好きなのでしょうが、品物を選ぶ真剣度が違います。少しでも安くて新鮮なものを選ぼうと、商品棚を睨んでいます。ぼくの買い物かごがそのお爺ちゃんのカートに当たると、恐ろしい顔で睨み付けられます。まるで戦場のようで、その光景を見るのも面白いので、スーパーにはよく行っていました。

スーパーに行くことも禁止され、仕事もなくなり、散歩ぐらいしか外に出なくなり、家にいてテレビをボーッと眺めていると、気分はどんどん滅入ってきます。

そうすると、死が忍び寄ってくるのです。「お前が死んだら、お墓はどうするんだ〜〜」という声が、どこからともなく聞こえてくるのです。

もう10年ほど前のことですが(これも大雑把ですね)、知人が自分の墓を買いました。ぼくより5、6歳若いので、年齢は50代の中頃だったと思います。「いったい何を考えているんだろう、墓なんか建てている暇があったら、もっと他にやることがあるのではないか」と思ってバカにしていました。

自分が生きているうちに建てる墓を生前墓と言うらしいのですが、ネットで検索したら生前墓の広告がたくさん出てきました。案外多いんですね、生前墓を建てる人が。相続税が軽くなるメリットもあるそうです。

生前墓のルーツは、古くは秦の始皇帝だと言われ、聖徳太子や歴代の天皇たちも生前にお墓を建てて、それを「寿陵(じゅりょう)」と呼んだそうです。そういうこともあって、生前墓は縁起がいいとも言われています。

それにしても、生前墓を建てると時々見に行くのでしょうか。そして、自分が死ぬ時のことを考えたりするのでしょうか。自分の墓を見て、気持ちが落ち込むことはないのでしょうか。