完食チャレンジがブームに

国家主席の指示を受けて、各地方政府や飲食業界はただちに反応した。街には節約や完食を謳うポスターが掲げられ、学校は食べ物の大切さを教える授業を導入。若者の間では食前食後の皿を撮影してSNSに投稿する「完食チャレンジ」がブームになった。

完食した客への割引券配布や、料理の重量をメニューに掲載するレストランも増えている。なかには客の体重を入口で量り、適正な注文量を店側が決めるとしたレストランまで。さすがにこれは物議を醸し、後に店は謝罪に追い込まれたが、客側もこのやりとりを楽しんでいたようだ。

さらに、ある地方政府が人数より1品少なく注文するよう奨励すると、「こちらは2品少なく」と対抗する地方政府が現れる。「2人で外食したら何も注文できないではないか」との指摘も何のその。我先にと奇策を講じ、人々が一緒になって面白がるのも中国ならではだ。

また今回、真っ先に非難されたのは近年人気の大食い動画。批判を受けて投稿サイトの運営側は、監視を強化し食べ物を粗末にする動画を削除するなど神経をとがらせている。

挨拶の代わりに「ごはん食べた?」と声をかけ、ビジネスも友情も食事なしには始まらない中国。食事を何よりも大切にする社会で、食べきれる量だけを注文する「勇気」が持てるかどうかが鍵なのかもしれない。(中国在住・伊勢本ゆかり)