選挙参謀との激しい心理戦

一方、小選挙では当選するのは一人だけ。「苦戦」と書かれてしまうと、有権者は、「この候補に入れても自分の票が無駄になる」と考え、「有力」と書かれた候補に投票します。こういう有権者の行動を「バンドワゴン効果」といいます。バンドワゴンとは行列の先頭を行く音楽隊。つまり派手で目立つ行動に付いて行く、というわけです。

「アナウンス効果」から「バンドワゴン効果」へ。これが最近の変化です。

そこで、中選挙区時代に取材をした私としては、選挙参謀との激しい心理戦を繰り広げることもありました。ある保守系候補の選挙事務所でのこと。「情勢はどう?」と私が参謀に尋ねると、「うちのセンセイ、苦戦しているんですよ」と言いながら、票読みの資料を見せます。そこには、その候補の順位が低く出ていました。

そこで私が、「これはマスコミ向けの表向きの数字でしょ。本物を見せなさいよ」と言うと、「バレましたか」と言いながら、机の引き出しから別の集計表を取り出しました。そこには候補がかなり上位に食い込んでいるというデータがありました。

しかし、そこで騙されてはいけません。「それは、陣営の運動員向けだろう。本物の本物を出しなさいよ」と言うと、さらに別のデータを出してきました。そこには候補がトップ当選する勢いであることが記されていました。

トップ当選の勢いであることがわかると、運動員の勢いが緩んでしまうので、陣営の運動員をも騙すのです。まさにキツネとタヌキの化かし合いです。私はキツネかタヌキか……。