◆同窓生の友だち申請を放置したら…
一方、更年期で体調が悪化したことを機に、ストレスが伴う人づきあいをリセットしたというのは、神奈川県に住む亜紀さん(56歳)だ。亜紀さんが更年期の症状に悩まされるようになったのは48歳の時。多汗と睡眠障害に加えてうつ病を発症し、仕事も休職することになった。
「もう日常生活のすべてが面倒になって。つきあいのあった友人とも連絡を取らなくなり、週に一度、夫と好きなサッカーの試合を観に行く以外、ろくに外出もしなくなりました」
筆者にも経験があるが、心のバランスが崩れると、元気な時にはなんでもないことが大きな負担になる。亜紀さんにとって特にストレスになっていたのが、中学・高校時代の同窓生とのつきあいだった。
「大学進学で上京するまで他県に住んでいたのですが、親の仕事の都合で何度か転校しているため、母校に思い入れがないんですね。なのでこの歳になっても続く同窓生との交流を、正直苦痛に思っていました。そもそも私の出た学校では、なぜか地元・県内の大都市・東京と、同窓会を3回ずつやるんです。その都度、やり取りをするだけで疲れてしまって……。更年期を理由に、出席はもちろん、出欠確認の連絡に返信することもやめました」
厄介だったのがSNSだ。亜紀さんはフェイスブックで一部の同窓生と、互いの投稿に「いいね!」をしたり、時にはコメントしたりというつきあいをしていた。するとそれを見たほかの同窓生からも友だち申請が届くように。
「でも、ろくに顔も覚えていない人だったので、承認をせず放置していました。すると人づてに『○○ちゃんは良くて私はダメなんだね~』と嫌みを言われ、こちらも体調が悪いものだからブチッと切れて(笑)。それ以降、地元関係の人の投稿には一切リアクションしていません」
もうひとつ彼女がやめたのは、年賀状を出すこと。長年の習慣だったが、面倒だと感じることはひとつでも減らしたいと思って決めた。
「もともと年に一度、挨拶文程度のやり取りをやめたところで、特に支障があるわけもなく、拍子抜けするほどでした。もう10年近く経ちますが、このまま再開することはないと思います」
このように義理だけの繋がりを断ってきた亜紀さんだが、反対にストレスが生じない交友関係は大切にしているという。それは現在夢中になっている編み物の集まりだ。
「編み物は、わからないところを相談できる相手がいないと上達しないんです。それで、体調が回復した頃に通い始めた教室で出会った人たちと、情報交換をするように。最近では、インスタグラムで編み物ファンとの交流を楽しんでいます」
一般的なSNSが文章メインなのに対し、インスタグラムは写真がメイン。メッセージが少ないぶん、気負わずに楽しめるところがいいと亜紀さんは言う。
「完成した作品の写真をアップすると、たくさんの『いいね!』がつくんです。写真は世界共通だから、海外の編み物ファンからも反応があって、すごく励みになります。時にはそこで知りあった人たちと、ニットの展示会に行くことも。好きなものが同じだと、初対面でも盛り上がれるんですよね。お互いアカウント名で呼び合って、仕事や年齢、夫の職業など、肩書を意識しないつきあいができるのも気楽でいいです」
疲れる関係は潔く手放し、プライベートに介入してこない趣味の仲間との交流を楽しんでいる亜紀さん。更年期を機にリスタートした人づきあいは、いい感じで進んでいる。