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◆ちょっとした「段差」が亀裂のもと
東京都在住の会社員、涼子さん(39歳・仮名=以下同)には、学生時代から仲の良い5人の友人がいる。全員が都内の企業で働き、予定を合わせては、仕事帰りに食事をしたり、観劇を楽しんだりしていた。
「そんなノリが変わったのは、メンバーの結婚がきっかけでした。最初のうちは私も祝福していたんです。でも5人のうち3人が結婚、出産する頃には、完全にママさんサークル化してしまって。5人で繋がっているグループLINEの話題も子どものことばかりで、シングル組は完全に置き去り。決してひがんでいるわけではないのですが、生活スタイルのズレからくる居心地の悪さを感じたんですね。LINEを未読のまま放置することが増え、ある時、何も告げずにグループごと削除してしまいました。以来、全員と疎遠になりましたが、今のところ後悔はしていません」と、涼子さんはスッキリした表情を見せる。
人生のステージごとに発生する、親しい人との「段差」。それがきっかけで、友情に亀裂が入るのは決して珍しいことではない。特にSNSを介してのコミュニケーションは、やり取りが頻繁になるせいか段差をより強く感じてしまうのかも。
「実は逆の経験もあって。数年前に私が職場で昇進した際、仲の良かった同期のA子との間に溝ができてしまったんです。社内で会えば話はするものの、LINEを送っても“既読”にならない。『ごめんね、スマホの調子が悪くて』と言い訳されましたが、たぶんその時の私を受け入れられなかったのでしょうね。もしかしたら気づかないうちに自慢めいたことを言っていたのでは、と反省しました」
幸い、A子さんも次の異動で昇進。今では2人の関係も元に戻っているという。段差でギクシャクしてしまったら、気持ちが落ち着くまで距離を置いてみるのもひとつの方法、と涼子さんはその時学んだ。わだかまりが消えれば、関係が復活することもあるからだ。
「SNSに関するもうひとつの反省として、むやみにアカウントやIDを教えない、というのがあります。さほど親しくない人と、その場の勢いで安易に繋がって、その後関係を切りづらくなったことが何度もあって。最近では連絡先を聞かれても、『私、SNSはほとんど休止状態なので』と断ることにしています。また友だちリストも年に一度は見直して、記憶にない人、交流のない人はどんどん削除するようになりました」
涼子さんは「ストレスなくつきあえる人数には限界がある」と言う。彼女の場合、浅いつきあいでも30人ほどが限界だとか。密につきあえるのは10人、本当に深い話ができる人となると1~2人がせいぜいだそう。
「シングルの場合、自分から積極的に行動を起こさないと交友関係が広がらないので、ある意味、既婚者より切実。せっかく繋がったのだから、と思うと、ストレスを感じていても関係を切りにくい。でも友人は大切だからこそ厳選して、つかず離れず、心地よい人数でつきあっていきたいと思います」