◆無限に増え続ける、ママ友のLINEグループ

子育てをするうえで避けては通れないのが、ママ友との関わり。涼子さんや亜紀さんとは対照的に「簡単に手放せない」と苦笑するのは、大阪府在住の夏美さん(47歳)だ。彼女は24歳から15歳まで、4人の子を持つ母。20年以上にわたり、ママ友とのつきあいを続けてきたベテランである。

「ママどうしの関係がもっとも密になるのは、行事が多い幼稚園から小学校にかけて。最近は皆LINEで繋がっていて、学校行事で役員をやるたびに、新しいグループができます。そこから内輪の小グループも派生するので、LINE上にグループの数がどんどん増えていくんです」

ママ友づきあいには、学校やお受験の情報が入ってきたり、相談相手を得られたりという利点がある。その反面、気が合わない人ともつきあわねばならず、グループ内でトラブルを起こすと居場所を失う危険もある、と夏美さんは言う。

「SNSの怖さは、言葉が独り歩きしてしまうところ。書き込みをする際は、自分の発言で誰かを傷つけたり怒らせたりしないか、何度も確認してから送信ボタンを押しています」

そんな慎重な夏美さんだが、一度だけあるママ友をLINEの友だちリストから削除したことがある。ところが、しばらくして別のグループで再び繋がることになり、非常に気まずい思いをしたそうだ。

「彼女は思いこみが強く、やることなすこと空回りするタイプ。役員の仕事をしていても、説明をちゃんと聞いていないためミスが多く、皆が持て余していたんです。私も疲れて『もうおつきあいすることはないな』と判断して削除したのですが、1年後にまた一緒に活動することになって……。再会するなり『何度送っても既読にならないよ』と言われ、冷や汗をかきました」

ママ友の場合、どこで関係が復活するかわからない。下の子の代に再会することもあれば、地域のボランティア活動やパート先などで一緒になることもあるからだ。

「とはいえ、そのままではグループが無数に増える一方。そこで役員など期間限定のグループは、任期が終わったら『お疲れさまでした!』と挨拶して、速やかに退会するなど、角が立たない範囲での対策をとっています。また親しくないメンバーとの食事会は、3回誘われたら2回は理由をつけて断って徐々に距離を置く。そんなふうに自分なりのルールを設けるしかないですね」

疲れていたり、家事や仕事に忙殺されている間に、しばらくSNSを放置していると、とんでもない数の未読メッセージがたまって驚くことがある。それがグループでの交流の面倒な点だ。親しい友人相手なら「ごめんね、ちょっと忙しくて」で済むけれど、それでは許されない関係もあるだろう。

「以前は電話連絡網で回していた連絡事項が一瞬で伝わったり、わからないことを尋ねるとすぐにグループの誰かが返事をくれたり。便利になったことはたくさんあります。でも、しんどいことも増えましたね……」と夏美さんはため息をつく。もともとコミュニケーションを円滑にするために生まれたはずのツールが、揉め事の原因になってしまうという皮肉――。まさに現代ならではの悩みと言えそうだ。