生きづらさは性格の問題と思っていたけれど

小島 大人になった今はこういうふうに語れますけれど、子どもの立場で、受け身でいなきゃいけないのはつらいことですよね。

沖田 あと私の場合、先生の言うことが聞けなかったので、教師から体罰を受けていて。口で言ってもわからないなら、手が出るのが当たり前の時代でしたから、親も、あんたが悪いから叩かれるんだ、と。当時は教師も発達障害のことを知らなかったから、しかたなかったのでしょうけど……。

小島 ADHDだと診断されるまでは、生きづらさや仕事をしていくうえでの困難は、性格や思想信条の問題かなと思っていました。たとえば女性アナウンサーという仕事は、世間が思う女子アナらしくふるまうよう求められる。でも私はそれを「やりたくない」という気持ちを乗り越えられず、無理してやろうとすると捨て鉢になったり。あと、黙っていたほうがいい場面でも、言いたいことを言ってしまう。そんな失敗は、数知れずありました。

岩波 「ひとこと多い」というのは、会社勤めの方にとってはダメージになりますからね。協調性がないと思われ、対人関係がうまくいかなくなり、不適応になる。外来を受診する人に、そういうパターンが多いです。

小島 コミュニケーションがうまくとれないと感じるたびに自己肯定感が下がり、過食嘔吐を繰り返して。ADHDであることが当時わかっていたら、もう少しコントロールできたかもしれない、と思います。

沖田 アナウンサーの仕事は、時間厳守ですよね。それは大丈夫だったんですか?

小島 スケジュール管理が苦手で、遅刻も多かったので、悩んでいました。放送での尺合わせ(時間内に読み終えること)はゲーム感覚で楽しめたのですが……。局アナを辞め、独立してから苦労しているのは、ある程度自分でスケジュール管理をしなくてはいけないということ。しかも複数のことを同時にこなすのが苦手なので、メモしなきゃと思ってもメモすること自体を忘れてしまう。いつも何かに追いまくられ、何かに遅れている状態です。

岩波 ADHDの方は、とくに口頭での指示を覚えるのが苦手。また、いくつもタスクが重なると混乱してしまい、能力があるのにパフォーマンスが低くなりがちです。

沖田 口で言われただけだと、すぐに忘れちゃいます。

後編につづく