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うつ病、発達障害、ADHD、拒食症、強迫性障害……さまざまな病名がインターネットを賑わす現代。とくに最近は、コロナ禍のため、子どもの心も不安定になりやすい。実際に受診する親子も増えている。しかし、思春期に心が折れた時 親がすべきことの著者、精神科医の関谷秀子さんは、病名をつけるだけでは根本的な解決にならないと警鐘を鳴らす。

「この子はあの病だと思うのですが違いますか?」

「コロナうつ」や「出勤再開不安」がとりあげられ、新型コロナウィルスに関連した心の悩みを抱える方がクリニックを受診されるようになりました。「心の病」が広く知れ渡り、精神科受診の敷居が低くなったことは、早期発見、早期治療につながる望ましいことと言えるのかもしれません。

「この子はあの病だと思うのですが違いますか?」「この病の症状もあるのですが」。子どもの心の問題でクリニックを訪れた親御さんからしばしば聞く言葉です。うつ病、発達障害、ADHD、拒食症、強迫性障害……。さまざまな病名がインターネットを賑わしています。

子どもに心の問題が生じると多くの親御さんはインターネットに溢れている病気の情報を調べます。自分の子どもにどんな症状があるのかを熱心に探り、診断テストを使って自己診断をしてから来院する方は少なくありません。

しかし、思春期の子どもの場合、発達の途上のつまづきがその症状の背景にあることが少なくありません。そのような子どもたちは、「うつ病」だとか「拒食症」といった病名がつき、薬を処方されるだけでは根本的な解決にはならないということについてお伝えしたいと思います。

 

ADHDを疑われたA君の事例

ここで、ADHDを疑われたA君について紹介します。

小学6年生のA君は、1年くらい前から、異変が見られるようになりました。それまではとくに問題のない児童だったのに、授業中に友達にちょっかいを出したり、計算や漢字の練習帳などA君が苦手な宿題は忘れるようになりました。また校内ランニングなど自分がやりたくないことがある日はさぼるようになりました。

先生に注意されても、口答えをしたり、茶化して逃げたりします。自分勝手な行動によって周りに迷惑をかけても謝らずに威張るようになり、クラスの中で次第に孤立するようになっていきました。養護の先生にADHDかもしれないと言われ、困った両親が私のクリニックに相談に訪れたというわけです。