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必要なのは、薬ではなく、両親との適切な親子関係

A君に必要なのは、薬ではありません。両親とのまともな親子関係を取り戻すことです。「虎の威を借るキツネ」のような状態になったA君。祖父の権威を借りて、父母を自分の言いなりにさせて、幼児のようにわがままで我慢のきかない子どもになっていました。

このままだと、友達とも対等な関係が築けなくなり、将来A君自身が生きていくうえで大変な困難を背負いこむことになるので、まともな親子関係を構築する必要があることを両親に伝えました。

父と母は顔を見合わせ「やっぱりそこが問題か」と腑に落ちた様子。両親と祖父母の間にはずれがありましたが、祖父母もこの問題に理解を示し、祖父母、両親4人で、この状況を改善することを決意します。

まともな親子関係とはなにか。つまり、A君についての大切なことは父と母が話し合って決定し、それをA君に伝えるということです。また、A君の要求のうち、妥当なもの、わがままなものを親が区別し、親の判断と違った関わりを祖父母がしようとするのは止めた方がよいということになります。

最初は自分の思い通りにならないことに腹を立て、祖父母を動かすことでなんとかしようとするA君でしたが、そのパターンに祖父母がのってこないということを知ると、徐々にわがまま放題な要求は減り、祖父母と同居する前の落ち着きを取り戻すようになったのです。

A君はADHDではなく心理的な問題や親子関係の問題が中心と診たてたため、薬物療法は用いませんでした。両親に対して親ガイダンスを長期間継続する方針をとり、それが効果をあげたことになります。