思春期特有の症状があります

「僕は発達障害じゃないですか」「うちの子どもはADHDだと思います」と受診にやってくる子どもと親御さんが最近は少なくありません。A君のように、受診された方の中には、「低年齢から発現している脳の問題」ではなく、思春期特有の発達課題が上手く乗り越えられずに「発達障害」や「ADHD」と似ている症状が現れている場合もあるのです。

『思春期に心が折れた時 親がすべきこと』(関谷秀子・著/中公新書ラクレ)

また、「発達障害」や「ADHD」と診断された子どもに問題行動が表れると、「解決は困難である」と判断されてしまうことがしばしばあります。しかしA君のように、家庭での子どもへの理解や対応、学校環境の調整を行うことで問題解決につながる場合もあるのです。

また、外来には「気分が落ち込んでやる気がでない」「学校に行きたくない」と訴えて来院する方もたくさんいます。「『薬を飲めば改善する』と言われたが飲んでも治らない」「『疲れがたまっているからしばらく休めば行けるようになる』と言われたけれど休んでも学校に行けない」という方にしばしば出会います。子どもの場合、大人とは異なり、うつ状態の背景に、発達上の問題が存在していることが多いからです。

思春期年代は本当に難しい課題を抱える時期です。親離れが始まり、同性の仲間と親しい友達関係を築くこと、第二次性徴を迎えて男性や女性としての自分の体に慣れていくこと、それに大人としての自分の将来像を描いていくことなど、毎日はハードルだらけですから、とても大変です。

そうした課題の数々に取り組めず、大人への発達路線から外れてしまうことで、自分の将来への不安や絶望感からうつ状態になる子どもたちがいます。ですから単純に大人のうつ病と同じように考えることはできません。年齢に応じた発達課題に取り組んでいくことが問題の解決につながっていくわけです。そしてそれは一人ひとり違うため、詳しく話を伺う必要があるのです。

詳しくは、『思春期に心が折れた時、親がすべきこと』に書いたので参考にしてください。