イラスト:石川ともこ
一般にも知られるようになってきた「発達障害」ですが、症状の表れ方は人それぞれ。もし自分や家族が発達障害であった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか。大人の発達障害の患者を数多く診断・治療してきた、専門医の宮尾益知先生にうかがいました(構成=田中有 イラスト=石川ともこ)

原因は生まれつきの脳機能のアンバランス

一見「普通」の大人が、会社や家庭でさまざまなトラブルに直面し、生きづらさを抱えて困っている──。その原因が発達障害にあるかもしれないということが、少しずつ知られてきました。私は小児精神神経科医として20年近く臨床の現場で過ごし、これまでに発達障害の子どもを1万人ほど診察しています。また、大人になってから「自分は発達障害ではないか」という疑いを持ち、悩んでいる方の診断も行ってきました。

発達障害とは、生まれつき脳機能の発達に遅れやかたよりがあり、かつ育った環境の問題などが重なって、社会生活をうまく送れない状態のことです。近年は大学に入ってから、あるいは就職してから生活につまずく例が注目されています。それまでは学校や家庭にある程度適応できていたのに、地方から上京してひとり暮らしを始めたり、会社で働き始めたりすると行き詰まってしまうことがあるのです。そうして睡眠障害やうつを患ったり、引きこもりになったりして医療機関を受診するというケースは少なくありません。

発達障害は大きく分けて、自閉症スペクトラム障害(ASD)、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)の3つです。人それぞれ症状にはバラツキがあり、また重複して表れることもあります。