親は生活を楽しむことを考えたほうがいい
工藤 ひきこもりや働いていない子どもがいる場合、家庭全体が閉じていることも多いですね。お母さんも、子どもがこんな時に趣味の教室に行っている場合じゃないと、習い事を辞める。「子どもが大変な時にゴルフなんて」と夫を責め、夫も「おまえ旅行なんてよく行けるな」と妻を責め、お互いに牽制して、家族全体が社会から孤立していく。
雨宮 親がそんなだと、子どもはますますプレッシャーを感じますよね。好き勝手に幸せにしていてくれたほうがどれだけよいか。
斎藤 実際、それが子どもの願いなんですよね。親はむしろ遊んだり、生活を楽しむことを考えたほうがいい。家族会で、ひきこもりの子のお母さんのうつ病スコアを測ったことがあります。13点以上がうつだと判断されますが、平均が12・9で、危ないラインでした。
工藤 家で両親の仲が悪かったり、親が好きなことを諦めたりすると、子どもは自分のせいだと自分を責める。それがたまって爆発すると、今度は「あんたたちのせいだ」という考えに変わることがあります。
斎藤 家庭内暴力にもつながります。
工藤 家庭内だけでなく、僕は社会からの抑圧も大きいと感じます。僕は今まで3回、育休をとっていますが、育休期間中、犬を連れて近くの公園に散歩に行くと、お母さんたちから「何しているんですか?」と聞かれることが多くて……。
雨宮 不審者扱いですか?
工藤 警察の職務質問を受けたこともあります。そういうことが重なると、嫌になって、出歩くのは夜になりがちです。
雨宮 ひきこもりの人の行動と似ていますね。
工藤 後ろめたいことがなくても、そういう扱いをされると、居心地が悪くなる。