現在発売中の『婦人公論』3月23日号の表紙はエッセイストの阿川佐和子さんです。昭和と令和のふたつのオリンピックを題材とした新聞連載小説『ばあさんは15歳』を昨年夏に完結させた阿川佐和子さん。オリンピック延期という思わぬ事態にアタフタした時期も――。発売中の『婦人公論』からインタビューを掲載します。(構成=篠藤ゆり)
「面白いものを作る」という共通の目的地に向かって
3年ほど前に、オリンピックをモチーフに小説を新聞で連載しないかというお話をいただきました。昭和39年の東京オリンピックを知っている私に、という依頼でしたが、「無理ですよ!」と即答。毎日掲載される新聞連載は、毎日〆切を抱えることになるわけですから、とても怖いと思っていたのです。
その後、雑誌の対談で作家の浅田次郎さんにお会いしたら、ちょうど新聞小説の連載を終えられた直後で、「大変だけど、依頼されるのは物書きとして光栄なこと。その機会は大切にしたほうがいい」とおっしゃった。私が依頼されたなんて話はしなかったのに、たまたま。で、お断りできなくなっちゃって……(笑)。それが、小説『ばあさんは15歳』が誕生したきっかけです。
まず、昭和と令和のふたつのオリンピックをつなぐために、頑固なばあさんと15歳の孫娘が昭和38年にタイムスリップするという設定を思いつきました。以前、伊集院静さんから、「できるだけ行ったことのある場所を舞台にしたほうがいい」というアドバイスをいただいていたので、私の通学路だった東京の三河台町、現在の六本木近辺を舞台に。東京タワーが重要な役割を果たします。