『婦人公論』3月23日号の表紙に登場している阿川佐和子さん(表紙撮影:篠山紀信)

執筆にあたっては、挿画を担当してくださった石川えりこさんにすごく助けられました。世代が近いので、「金魚屋さん? いたいた」「木の電信柱だったね」なんていう話をたくさんして。

また、彼女から「この人の髪形は?」「家の間取りは?」と質問されるんです。筋立てばかりに気をとられていると、つい、人物や周辺のディテールが疎かになって。彼女に細かく質問されたことで登場人物のキャラクターがどんどんふくらんで、より具体的に書くことができたんです。

連載期間は19年10月から20年7月まで。途中、書き溜めた分が少なくなってくると焦りましたし、新型コロナウイルスの流行やオリンピック延期など思わぬ事態が起こったので、アタフタした時期もありましたね。

私は甘ったれで、自信がないから、つい「もう書けないよ……」などと愚痴をこぼしがち。だから、小説に限らず、インタビューでもテレビの司会でも、仲間と共同作業で仕事を進めていくのが好きなんです。

今回も、「面白いものを作る」という共通の目的地に向かう「チームばあさん」のメンバーに励まされ、いつの間にかひらめきを与えられて、みんなとジャムセッションのように音を出し合いながらこの作品を書き上げることができました。『婦人公論』読者の皆さんにも、小説の中の時間旅行を楽しんでいただけたら嬉しいです。

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