イラスト:岡田里
突然降りかかったのっぴきならない事情から、近くで暮らすことを決めた。でも、いざ始めてみれば、「やっぱりやめておけばよかった」と思うことが続いて──(「読者体験手記」より)

よかれと思い、家を残すことにしたけれど

私は昭和5年生まれ。小学1年生で日中戦争、6年生で太平洋戦争が始まりました。敗戦後、高等女学校が高等学校となった第1回の卒業生です。19歳の年に成人の日(1月15日)ができ、そのとき満年齢で20歳となりました。

今日まで髪にパーマネントをかけたことも染めたこともなく、口紅を塗ったこともありません。目も耳も特に問題なく、自分の歯は23本あります。「欲しがりません勝つまでは」の精神で生きてきました。若い頃はいつもポニーテールで、それなりに可愛かったと思います。

同い歳だった夫は、84歳のとき肝臓がんで死去。その後2年ほど一人住まいをしていましたが、最寄りのスーパーが閉店し、買い物難民になったことを心配した娘たちから、同居の話を持ちかけられたのです。

私には娘が2人おり、それぞれ長男のところに嫁ぎました。長女はすでに夫の親と同居しています。有料老人ホームに入ることも私は考えていましたが、次女が「うちにおいで」と言ってくれましたので、孫娘2人を含めた5人で、4年前から一緒に暮らすようになりました。