「変わってる」と言われることが快感

退団後、宝塚の卒業生として松竹エンタテインメントに所属させていただくことにしたのも、《笑い》や《人情》がポイントでした。宝塚時代も今も、私が演じたいのはその人の生き方がしみじみと心に響く役。

実は、『霧深きエルベのほとり』で、べらんめえ調の水夫・カールを演じることになった時、フーテンの寅さんをヒントに役作りをしたんです。そのために、映画「男はつらいよ」シリーズを観たらすっかりハマってしまい、そういえばこの映画を製作したのは松竹だった、と。以前から好きだった歌舞伎も松竹が製作・興行をしていますしね。そこで、歴代トップの先輩たちとはまったく違う路線を歩むことに決めたのです。

振り返ってみれば、「面白い男役」なんて、それまでの宝塚にはいなかったんじゃないかと思います。おかげで、「異端児」と称されましたけど、「変わってる」と言われることがむしろ快感で。だって、王道のカッコいい王子様なら私じゃなくてもできますからね。

あえて汚れ役をやりたいというわけではないけれど、「自分にしかできない表現は何なのか?」と考えるのが好き。「この役を、そんなふうに演じるの?」という意外性を常に追求していきたいんです。

 

『ピーターパン』になりきって骨折

思えば、子どもの頃からかなり変わった性格でした。基本的には飽き性なんですが、いったん《これ!》というものに出会うと、めちゃくちゃ思い込みが激しくて。

小学3年生の時に『ピーターパン』のミュージカルを観てハマってしまい、親に頼んで買ってもらった緑色の服を着て、1年間、自分はピーターパンだと信じ込んで過ごしていました。挙句の果てに、その恰好で2階から飛び降りて骨折。「思いが足りなかったからだな」と再度飛ぼうとしたり。(笑)