小池修一郎先生から学んだこと

それだけ強く念じていたので、20代も半ばを過ぎた頃、若手育成のための舞台『アンナ・カレーニナ』のオーディションで勝ち抜いて、二番手の役がついた時は本当に嬉しかったですね。せっかくいただけた役なので、後悔したくない一心で全力で取り組みました。

そうしたら、その次の新人公演『スカーレット・ピンパーネル』のオーディションで、いきなり主役のグループに入れてもらえて。予想外のことだったので、トップクラスの人たちに囲まれて気疲れしてしまい、オーディションが終わるとすぐに部屋に帰って寝ちゃったんですよ。

で、夜中の12時過ぎに目が覚めて携帯を見たら、プロデューサーからの着信がズラリと並んでいる。「私、なんかやらかした?」と、焦って折り返したところ、「主役に決まったから」と。「なぜ、私が?」、頭が混乱し、朝まで一睡もできませんでした。

ガラッと世界が変わったのはそこからです。上級生方が「よかったね」と喜んでくださり、山のような「おめでとう」メールを受け取って夢心地だったのはほんの一瞬。

次の日からは、演出家の小池修一郎先生に徹底的に叩きのめされる地獄の日々。歌もダンスもお芝居も、私があまりにも何もできないので、「いい加減にしろ!」と、毎晩遅い時間までご指導いただき、自分のなかで消化するために自主的に稽古をしていたら、気づけば睡眠は1~2時間。満足に食事をする暇もないありさまでした。

でも、そこまでしごいてくださったのも小池先生の愛情があったからこそ。何もできない私につきっきりで教えてくださって、私もその思いに報いたいという一心でした。その時に、先生から「あきらめなければ夢は叶う」という、人生の基本姿勢を教わりました。