「最後の時『疲れた、もう辞めたい』ではなく、自分自身の宝塚人生に悔いはなく、宝塚が大好きだと心から思える心境で、男役を120%の力でやりきって退団したかったんです。」

トップ就任時に退団時期を決めた

何事もあきらめるのは簡単です。でも、あきらめたらそこで終わってしまう。そこをなんとか踏ん張れば、それが次の自信につながっていく。マラソンにたとえるなら、ビリでも、匍匐前進でもいいから42.195km先のゴールにたどり着く。そうして最後までやりきったと自分で納得できて初めて、次のステップに進めるのだと思います。

その時から「ネバーギブアップ」が、私の座右の銘になりました。「できる、できる、君ならできる!」という松岡修造さんの応援歌をいつも聴いていましたね。

そう考えていたからこそ、星組のトップ就任のお披露目公演中に退団する時期を決めたんです。プロデューサーからは「早っ!」って驚かれましたけど、最後の時「疲れた、もう辞めたい」ではなく、自分自身の宝塚人生に悔いはなく、宝塚が大好きだと心から思える心境で、男役を120%の力でやりきって退団したかったんです。

だから、私が大劇場で主演を張れるのは5作だな、と。そこからカウントダウンして、どんなペース配分で、と計画。また後輩には、どの時期に何を言ってあげたらいいだろうかと考えて。自分のなかでゴールを決めていたので、1公演たりともおろそかにはしたくなかった。公演中は毎朝4時に劇場入りしてその日の舞台に備え、最後まで全力で走りきることができたので、何一つ思い残すことなく卒業することができました。

 

女性らしい体形に肉体改造中

退団後は自由に使える時間も増えたので、目下取り組んでいるのは肉体改造。宝塚時代は、男らしく見せる必要があり、衣裳もものすごく重かったので、ガッシリした体形をキープしていました。

でも、これからは《女優》です。自分の意識を変えるためには、まず形から。体の線がくっきりわかる女性らしい衣裳が似合う体形に改造しようと、ほぼ毎日、ジムに通ってトレーニングをしています。

正直な話、初めてスカートをはいて公の場に出る時は躊躇したんです。それまで私を応援してきてくださったファンの方たちの気持ちを考えると、退団後、いきなり私がスカートをはいて出てきたら、ショックなんじゃないかな、と。自分も宝塚ファンだったので、そう感じるのもよくわかるんですよね。

でも、幸い「意外に似合う」と言っていただけたので、ほっとして。今は一人の女性として好きな服を買いに行けるのが本当に楽しい。クローゼットの中にもスカートやワンピースが増えました。