「乳児の頃はすごく可愛かったんですけれど、2、3歳で駄々をこねたりするようになったとき、自分も父のように息子に暴力をふるってしまうんじゃないかと怖くなりました。それに息子を見ていると、父からされたことを思い出してしまって……」

実際に子どもに手をあげそうになったとき、「このまま一緒にいるより、離婚したほうが子どもにとってはいいのかもしれない」と思い至り、本当の理由は話さずに妻に離婚を切り出した。

「離婚したことで、息子に暴力をふるわずに済んでよかったと思います」と話す正さんだが、子どもと離れて暮らす今もフラッシュバックが起き、その頻度は年々増えているという。両親は今も健在だが、会いたいとは思わないし、もし介護が必要になっても、「首を絞めてしまうかもしれない」と不安になる。親と仲よく接している人がうらやましいと話した。

 

妻にはよく「暴力的だ」と指摘され

小学生と保育園児の息子をもつ勇さん(36歳)は、父親から暴力を受けて育ち、自身も子どもを虐待してしまい離婚した男性だ。

「殴られたことや、車のトランクに入れられたことは覚えています。虐待されていたという認識ではなく、『行きすぎた親父だな』というくらいの印象でした。でも当然、父親のことは嫌いで、自分が親になっても父のようにはならないし、自分は大丈夫だろうと思っていました」

父親は寡黙な人物で、話をした記憶はほとんどなく、声も思い出せないくらいだと、勇さんは話す。また母親は穏やかな人だったが、勇さんを助けてくれることもなかった。