責めるだけでは虐待はなくならない

では、彼女ら・彼らはどうしたら救われるのか。信田さんは「こういった人が精神科や心療内科を訪れたときに生育歴をていねいに聞かれるだけでも違うはず。保険診療では難しいかもしれませんが」と話す。

トラウマという視点をもつ必要があるのは専門家だけではない。すべての人が、自分や身近な人が過去に虐待を受けているかもしれないと意識することで、次なる被害を食い止められる可能性がある。

「子どもにやたらと当たってしまう、家族への暴力行為が止まらないなどの場合、『何らかの被害経験とつながっているのかもしれない』という視点をもって専門家につながることがとても大事です。『トラウマ症状はクライシス(危機的な状況)が去った後にやってくるもの』と知っていれば、妻や夫が問題行動を起こしたとき、その人を責めずに済むでしょう」

ただ責めるだけでは、虐待はなくならない。虐待の一歩手前で「子育てがつらい」とサインを出す人たちにどう寄り添っていけるか、私たちは考えていく必要があるだろう。