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親から子に対する、耳を疑うような虐待のニュースが、残念ながら後を絶たない。もしその親自身も虐待を受けた過去があったとしたら──後編は、父から暴力を受けてきた男性の事例です。(取材・文=大塚玲子)

前編よりつづく

あざや傷があっても……

女性だけでなく、虐待を受けた男性も同様の苦しみを訴える。13年前に離婚した正さん(48歳)は、小・中学生のときに父親から激しい暴力を受けていた。アルコールに依存していた父親は、仕事が終わって帰宅すると、寝ている正さんを起こして殴る蹴るの暴行を加えた。

「毎晩のことだったので、怖いという感覚も麻痺していた感じです。よく投げ飛ばされて頭をぶつけていたので、今でも頭の形がちょっと歪んでいます」

学校の先生にも誰にも相談はできず、あざや傷があっても心配してくれる大人はいなかったという。

「父が暴れているとき、母は近くにはいませんでした。自分も危害を加えられると思って、私を助けられなかったんでしょう。小学生の頃から、『早くひとり立ちして家を出たい』と考えていましたね」

大学に入ってひとり暮らしを始めてから、正さんは一度も実家に帰っていない。大人になってからは普通の生活を送れるようになっていたものの、前出のももこさんと同様に、結婚し、息子が生まれてから苦しむようになった。