切り詰めても生活に余裕はない

その後、夫を呼び寄せ私の実家で数ヵ月住むことにした。その間は、母に泣きつき生活費を負担してもらい、夫の収入はすべて貯金。こうして家族3人、なんとかアパートに引っ越しする費用を捻出することができた。

だが、安アパート暮らしでも生活に余裕はない。食費や娯楽費はかなり切り詰めた。子どもと遊びに行くときも、公園や公民館にお弁当を作って持って行く。ハンバーガーショップで昼食をとっているママ友が羨ましかったが、そんな贅沢はできない。

洋服やアクセサリーもバブル期を謳歌した独身時代から激変した。あの頃、身に着けるものはすべてブランド品。1着数万円もするブラウスやスカートばかり着ていた。ところが子どもが生まれてからというもの、ゆっくり買いものに出かける暇もなくなり、近所のスーパーで買った数千円の洋服ばかり。鏡に映る自分を見て、哀しくなった。

そして今の私はお金で夫に雇われているヘルパーのようだ。家族のために食事を作り、コタツに入ってテレビを見る夫の視界を邪魔しないように、部屋の隅に座って、次の食事の準備まで待機するのが私の毎日だ。

遊ぶお金がほしくて働きに出ようと思ったこともあった。でも、あの当時の売り手市場はどこへやら。主婦歴数十年の私を雇ってくれる会社はない。もう一度、あの輝かしい時代、キラキラしていた自分に戻れるならば、すべてやり直したい。


※婦人公論では「読者体験手記」を随時募集しています。

現在募集中のテーマはこちら

アンケート・投稿欄へ