イラスト:古村耀子
結婚32年。夫も妻もお互いがなくてはならない存在で「いて当たり前」の生活を送っていた。そんな日常がある日突然断ち切られる。夫が寝室で倒れていたのだ。揺さぶっても叩いても目を覚まさない……。(「読者体験手記」より)

夢なら早く目を覚ましたい

職場に出勤すると、つい夫の姿を目で探してしまう。会議室、喫煙室……どこにもいない。同じ職場にいた彼がいなくなったこと以外、私の日常には何も変化がない。どうして? なぜ死んじゃったの? 夢なら早く目を覚ましたいよ、お父。

結婚して32年。お互いになくてはならない空気のような存在で、「いて当たり前」の生活を送っていた。笑ったり喧嘩したり、いろんなことが次から次へと思い出される。年に3回、家族3人で温泉旅行に行くのがなにより楽しみだったね。見なければいいのに、アルバムをつい広げて涙してしまう……だめだよね。

亡くなってから初めて、お父がやってくれていたことの多さを知った。自家用車の車検の時期に、ガソリンの入れ方だってわからない。ファンヒーターの灯油も買ってくれていた。庭の草むしり、24時間風呂の掃除も。スーパーでの買い出しだって、毎週末2人で出かけていたのに……1人じゃ、とても持ちきれないよ。

今年30歳になる一人息子はお父が大好きで、親子であり友だちでもあり、時に喧嘩しながらも仲良くテレビゲームをしていた。職を転々として、今は無職。一人っ子だからと甘やかしすぎてしまったかな。