「亡くなっているので救急搬送はできない」

お父は飼い猫に、いつも赤ちゃん言葉で語りかけていた。猫もよくお父の後をついて歩いていたっけ。去年の4月。あの日、異変に真っ先に気がついたのも猫だった。朝、私がお父より先に起きて家事をしていると、2階の寝室で猫がすごい鳴き声を上げた。慌てて部屋に行き、お父を起こそうとしたら、揺さぶっても叩いても目を覚まさない。

119番すると、「救急隊が到着するまで心臓マッサージをしてください」と言われ、泣きながら息子と代わる代わるマッサージをした。でも、お父の状態を診た隊員さんから、「すでに亡くなっているので病院には搬送できません」と言われてしまい、ぼうぜんとする。

警察に連絡がいき、すぐにパトカーがやってきた。事件性がないか調べる必要があると言われて事情聴取を受けたため、運び出されるお父を見送ることは叶わなかった。息子は台所、私はリビングで……昨夜から今朝までの行動を細かく聞かれ、郵便物やお父の写真まで不審な点がないか調べられる。それが彼らの仕事だとはわかっていても、あまりにひどい仕打ちだと感じてしまう。

警察官は事件性なしと判断し、「監察医が死因を調べたら連絡します」と言った。そして、「すぐ葬儀業者の手配をして迎えにきてほしい」とも。言われるままに葬儀社に電話をし、私の妹や親戚にも夫の死を知らせたはずなのだが、その時の記憶があまりない。息子がしっかり対応してくれていたのが救いだった。