あれから1年経ったけれど

救急車やパトカーが立て続けにわが家にやってきたので、近所の人からは何事かと観察されていたらしい。あれから1年近く経つが、いまでもゴミは収集日の朝5時ごろに出している。いつ亡くなったの、原因はと、お父のことを知らない人に聞かれるのが嫌だから!

そして、大変だったのは葬儀費用の準備だ。わが家は夫婦で別の財布を持つようにしていたため、私の口座から貯金を下ろし、費用を用立てた。手続きを経て、お父の口座からお金を引き出せるようになったのは、葬儀から1ヵ月も後のことである。

お父の葬儀は、コロナ禍で県内に緊急事態宣言が出された時期に行われた。列席者は家族や親戚のなかでも最低限に留めたが、300人近い方からことづけでお香典をいただき、お父が慕われていたことを知って、涙した。

よく「起こったことにはすべて意味がある」と言われるけれど、こんなにつらい思いをしなくてはいけないのなら、意味なんていらない。毎日朝晩、仏壇にお線香をあげて、話しかけたり日記に書いたりしているけれど、返事があるわけでもなく、遺影の写真は笑っているだけ。いまはただ、お父に帰ってきてほしい。


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