イラスト:大塚砂織
代わり映えのしない日常ら心機一転、憧れの世界へ飛び込んだ!しかし、やっと見つけた居場所も「心のオアシス」とはするのは難しい。大家さん(仮名・主婦)は華やかな世界を夢見て計画を始動したところ…(「読者体験手記」より)

娘の急死をどうしても受け止められなくて

数年前に最愛の娘を亡くしてからというもの、生活に張り合いがないうえ、ちょっとしたことで鬱々としていた。娘の急死をどうしても受け止められなかったのだ。

そんなある年の暮れ、テレビを見るともなしに見ていたら、宝塚歌劇の舞台『ベルサイユのばら』が放映されていた。そういえば、私の高校時代は『ベルばら』ブーム真っ最中だったと思い出す。わが地方都市のアーケードにまで、高らかに「あいィ、それはァあまくゥ」と流れていた。友達と「オスカルさまぁ」「アンドレがいいわ」「フェルゼンさまも素敵」と言い合っていたっけ。

気づけば、久しぶりに観た宝塚にぐんぐん引き込まれ、落ち込んでいた気持ちも一気に晴れた気がした。

「なんて素敵な世界なの。とくにアンドレ役の方がすばらしい!」。宝塚の舞台を生で観たくなった。早速旅行会社に行って飛行機のチケットを取り、いざ関西へ。阪急宝塚駅から劇場まで続く「花のみち」の美しさに感動し、生の舞台のキラキラさ、タカラジェンヌの華やかさにノックアウトされ、日頃のモヤモヤなんてどこかへ消え去ってしまった。