考えてみれば私は運動オンチだった

しかし、私は新たな苦悩を抱えることになった。

踊れなかったのである。

先生のダンスを見て、続いて真似てみる。この振り写しが、まずできない。やっと4小節分のステップを覚えたなと安心して、次の4小節へいくと、前の振りを忘れてしまう。

先生がつきっきりで手足の動きを教えてくれるのだが、緊張して頭の中がパニックになる。同じ頃に入会して、ダンス経験はないと言っていた人が、私より断然早くマスターしているのがさらなる焦りを呼ぶ。他の人は数度習うと、もう体に入るようなのだ。

しまった。考えてみれば私は運動オンチだった。背だけは高いのだが、スポーツ全般がダメ。体育の成績は5段階でいつも2か3だった。しかも、リズム感がない。歌も下手だったので、音楽の成績もずっと3。

発表会まで7ヵ月。踊るのは4曲、そのすべてが群舞である。間違えたらすぐにわかってしまうのだ。これは恥ずかしい。週1回ではとても振りを覚えられないので、先生に頼んで別の日も教えてもらうことにした。

先生は言う。「おうちでも、時間を見つけてステップの復習をしてね」。しかし、家に帰ると、はて? もう動きを忘れてしまっている。そして次の練習日に行くと、また振り出しに戻っており、先生に溜め息をつかせてしまうのだ。

群舞の中で1人別のポーズをしては赤面する私。「す、すみません!」。ダンスってがんばっても踊れないものだったんだ。ようやく理解できた。