87歳の時にわが家の料理担当デビュー
小林 そのうちまさみちゃんは夢を叶えて、本まで出すようになってね。そしたら、アシスタントが欲しいっていうわけ。台所に立つことは苦にならなかったから、「じゃあ、オレがやってやるよ」と言ったのが運の尽き。
中村 運の尽きというか、運の付き始めね!
小林 そう。まさみちゃんにも言われたの。「お義父さんは使い物になる」って(笑)。そのうち料理関係の編集者から「まさるさんの本を作ろう」と持ち上げられて。豚もおだてりゃ木に登るで、どんどん登っちゃって、76歳の時に料理研究家デビューもできました。
中村 すばらしい〜! 実は夫(作曲家の神津善行さん)も、87歳の時にわが家の料理担当デビューしたんです。
小林 へぇ〜っ!
中村 2年前、私が大腿骨を骨折して入院した時に、夫が毎日お弁当を持ってきてくれてね。でも、本当に作っているのか疑っていたのよ(笑)。退院して自宅のベッドで寝ていたら、いやに台所を出たり入ったりしてるじゃない。そのうち「ごはん、できたよ」って言うからびっくり。「あなたが作ったの? やったわね、お父さん!」って。私、女優だから人を乗せるのがうまいんです。(笑)
小林 褒めてもらうのが、料理を作った人には一番の褒美だからね。
中村 それまでの夫は、家事を一切しない人でした。でも考えてみると、息子は早くから海外暮らし。家には私と娘たちの女3人だったから、男が家事に口を出すと私たちがイヤがるだろうなと思って、わざと何もしなかったのかも。
小林 その気持ちはわかります。
中村 私もわりと古いところがあったので、夫が家事をしようとすると、つい「それは私がするから」と言ってしまう。でも高齢で体がきかなくなったら、そんなこと言っていられないわよね。いまや夫は、自分のものは自分で洗濯して取り込んで畳み、買い物も行くようになって、おかげで私はだいぶ家事から解放されました。