1男1女を授かり、2人が幼稚園に入ると、周りの人たちに両親のフルネームを無邪気に話すようになった。「父母の名字が違うなんて、きっと家庭に何か事情があるのだろう」と思う人もいたようだが、そのことでいじめを受けることもなく、子どもたちはいたっておおらかに育った。私たち両親が事実婚を自らの意思で選び、子どもたちにも前向きに話していたので、父母の姓が同じでないことを特別なこととは思わなかったようだ。

子育てと仕事の両立は大変だったが、子どもたちは2人とも健康で聞き分けよく、保育環境を整えるのには苦労したけれど、それをつらいと感じたことはない。仕事の面では旧姓のままのほうが楽だった。私は忙しい毎日を送っていても幸せを感じていた。子どもに対しては、「私の子どもに生まれてきてくれてありがとう」という思いでいっぱいだったし、私も自分の母の気持ちがわかる年齢になっていた。

 

不倫に次ぐ不倫に耐え忍ぶ普通の妻のように

Aはマイペースで飽きっぽく、思い込みの激しいところがあり、私とうまくかみ合わない部分もあったが、真面目に働くいい父親だと思っていた。子どもや私に対する愛情も感じられたので、その点で私は彼を信頼していた。ところが下の子が小学校に上がる年、大きな異変が起こる。Aと、同じ会社の既婚女性とのW不倫が発覚したのだ。

それまでの幸せな日々は完全に消え去った。私は孤独の谷底に突き落とされ、まっすぐに歩けないほど心身に支障をきたした。信頼していた相手に裏切られることが、これほどつらいとは。私たちは紙切れ一枚の薄っぺらな関係なんかじゃなく、「婚姻届未提出同盟」という強い絆で結ばれていると思っていたのに。

しかし、この絆と幸せを守ろうと頑張っていたのは私だけだった。彼はこの暮らしに違和感を持っていたのだろうか。2人の子どもがやむをえず私の姓になっているのは、彼にとって想像以上につらいことだったのではないか。家庭内で3対1になり、疎外感を抱いていたのかもしれない。