(イラスト:おおの麻里)

足元の小さな幸せを嚙みしめて

コンビニを始めて15年、何とか契約満了を迎え店をやめることができた。奨学金を借りて大学を卒業した娘も、昨年就職して独立。節約に節約を重ね、山場は乗り越えたが、今なおお金はない。職業病ともいうべき過重労働による慢性疲労や腰痛は持病として残る。50歳という年齢を考えれば、その後の転職活動は厳しいものであると思われた。夫も、私自身も、納得いくような職場はそうそう見つからないだろうと。

しかし、夫は学生時代の知り合いを通じて正社員の職を得ることができた。私もハローワークで、たまたま家の近所でパートを募集しているのを見つけ、雇ってもらうことに。世帯収入は家を買った頃に比べれば半分以下。夫にはボーナスも退職金も昇給もない。私もカレンダー通りに休みになるから、連休や年末年始に当たる月は、収入はわずかだ。

正月やお盆には、夫の実家にきょうだいが集う。きらびやかなお取り寄せおせちや豪華なオードブル。裕福な親戚たちがその日のために頼んだものや買ってきたもの。それ以外にも、数々の手土産や両親へのお小遣いを渡している。

わが家は、小さな菓子折りを渡したきりでご相伴にあずかるばかり。周囲からの憐れむような視線を感じるが素知らぬふりをする。だから、昨年はコロナ禍で集まる機会がなく、少しホッとした。

「服も買えんような生活させてごめんね」。着た切り雀の私に、姑が申し訳なさそうにつぶやく。