だが。身の丈に合わぬ行動をしたからなのか、優越感が一瞬にして吹き飛ぶような出来事が起こる。
夫の会社が傾き始めたと思ったら、あっという間に潰れた。どこの会社も正社員雇用を渋り、夫の転職活動は困難を極める。これといった資格もなく、ましてや家と家族持ちで手当を必要とする人材など、面接すらしてもらえないことも少なくなかった。
わずかに退職金が出たが、そんなものは焼け石に水。高い年収が続く前提で組んだ住宅ローンは家計に重くのしかかり、残る道は家を売ることしかない。しかし、ローンの残額が多すぎて、たとえ売れても売却損が出る始末で、売るに売れない。
家を建てた時に貯金はすべて使い果たしたし、建築途中に思わぬ設備投資が必要になり、両親に借りた200万円もある。このままでは、半年もしないうちに家計が破綻してしまう。
ずっと続いていた晴天が、突然翳り出し、あっという間に一歩先すら見通せないような土砂降りに。そんな気がした。
売り上げが高くても手元にお金は残らない
夫婦で暗澹たる気持ちで過ごしていた時だ。ふと連絡をくれた夫の友人の紹介で、夫婦でコンビニのフランチャイズ契約をすることになった。契約に必要な諸経費や開店資金はフランチャイズ本部に借り、なんとか開店にこぎつける。止む気配のなかった大雨の中に、一筋の光が差した。真面目に働けばその分だけ、ちゃんと自分に見返りがあると信じて疑わなかったからだ。
しかし、この道もいばらの道だった。
どうやら私たち夫婦には、商才はなかったようだ。365日休みもなく、慢性的な人手不足やクレーム、トラブル対応に追われる日々。やってもやっても、仕事はどこかから湧き出てくる。