心身の疲れ以上につらかったのは、支払いの工面をすることだ。自営業がこんなにお金が貯まらないものだと、この仕事に携わるまで知らなかった。まるで底なし沼である。人件費をはじめとする諸経費全般を経営主が負担するフランチャイズ契約では、なかなか自分たちの懐にお金が入ってこない。

店の売り上げは大きかったが、開店時の借金の返済や本部へのロイヤリティの支払いは容赦ない。夫の手取りが10万に満たない月もある。利益があがるのに、お金はほとんど手元に残らなかった。

それでも毎月、フランチャイズ本部にお金を借りて生活費に充て、住宅ローンを何とか落とさずに払い続けた。2ヵ月払えなければ、家は銀行に差し押さえられてしまうからだ。

娘の成長とともに学費も高くなり、なおさら家計を圧迫するようにもなった。公立の進学校に進んだ娘は、高校で必要なものやガラケー代、模試費用を自分で捻出したいと言う。原則アルバイト禁止だったが、先生に家庭の事情を話して頼み込んだ。私も学校に出向き、生活を支えるためにバイトの必要性を懇願した。

「親と一緒の職場なら」との条件でバイトを許可してもらったものの、私たち親子を見る先生の切ない表情は、今も忘れられない。

家族3人一致団結、家計を支えるために日々頑張った。しかし、やはり出ていくお金が多過ぎる。

ここでもし、大きな病気でもして夫婦どちらかが働けなくなったらおしまいだ。その恐怖心が常に付きまとう。それ以前に、病院に行く時間もお金もないのが現実だった。

とにかく24時間365日、店のスタッフが途切れないようにして、あきそうな穴を埋め続ける日々。睡眠時間を削り、夫とともに日の出前に車に乗りこみ、早朝勤務をこなす日も多かった。「いつか、いつか絶対にこの底なし沼から抜け出してやる」、それだけを胸に秘めながら。