肩の力が抜けた美しさ

装飾のための植物は、「こういう姿にしたい」という計画ありきのものなので、枯れたり伸びすぎればすぐに交換されてしまいます。風や光が少ない場所で弱っていく姿を見るのも、何だか自分のやりたいことと違うような気がして、日々悶々としていた気がします。

そんな私の心のすき間を埋めてくれたのが、路上の植物でした。デザインとして完成されているわけではないけれど、住む人が暮らしを楽しむために育てる鉢植えの、どこか肩の力が抜けた美しさ。段差にはブロックを挟み、鉢の上にも鉢を重ね、限られた空間を何とか生かして植物を育てようとする涙ぐましい工夫。植えた人の意図を超えてどんどん大きく成長したり、種がこぼれて、元いた場所から植物がはみ出していく姿も健気で、なんとも愛しく思えたのです。

そんな植物の様子を撮影しては家族や友人に見せていたのですが、最初は「何が面白いの?」という反応でした。でも5~6年前に、撮りためてきた写真に「路上園芸」「植物のふりした妖怪」などのハッシュタグを付けてツイッターとインスタグラムに投稿したところ、面白がってくれる人が徐々に増えてきて。

 

ビルの駐車スペースの脇に干してあった洗濯物。その背後には、パラボラアンテナのような、妖怪のような巨大なアロエが! 立派な花を咲かせた跡が残っていた

 

2020年には活動を本にまとめたことで、幅広い世代の方に知ってもらえたようです。親世代の方から「こういう視点で見ると、身近な街にも緑があふれていることに気づきました」といった反響をいただき嬉しく思っています。