いつもの風景にも新しい発見が

私は下町によくある、赤い消火器ボックスと鉢植えのマッチングを撮るのが好きです。あるいは、かつて食材が入っていたであろう発泡スチロールの箱など、別の用途で使っていた入れ物を鉢に転用する「転職鉢」を探してみたり。植え込みや歩道、線路際など公共の場にひっそり置かれ、誰かの庭と化した場所にある鉢を「どさ」と呼んで楽しんだり。何かテーマを決めて眺めてみると、いつもの街の風景に新しい発見があるかもしれません。

理・美容院や喫茶店、蕎麦屋さんなど古くからあるお店の前も、格好の路上園芸スポット。建物や看板のデザインと植物をセットで楽しんだり、店主の人柄やセンスを想像してみたり。私の経験上、路上園芸がステキな飲食店は味もよいので、お散歩の寄り道にもおすすめです。

 

個人商店のシャッターの前には、整然と並ぶ鉢植えが。鉢の大きさが統一されていて、土に刺した薬剤には植えた植物の名前が丁寧に書かれている。持ち主の几帳面な性格を感じさせられる一角だ

 

そこにお住まいの方やお店の方がいれば、「きれいですね」と話しかけます。もともと園芸好きの方たちですから、「この桜は40年前に結婚記念で買ってきて」なんてエピソードを聞かせてくださる。ときには「鉢を持っていかないで!」といった貼り紙に、持ち主の心の叫びを感じることも。そうした人と植物のかかわりの深さを知るのも、路上園芸ならではだと思います。