プロデューサーの村松秀さん(撮影:本社写真部)
プロデューサーとして多くのテレビ番組を製作してきた村松秀さん。コロナ禍で苦悩する演奏家たちの姿を番組にしたところ、大きな反響があって――(構成=千葉望 撮影=本社写真部)

音楽を通じて生きる意味を見いだす番組を

僕がクラシックのコンサートに初めて行ったのは小学生のとき。父親に頼んで聴きに行った小澤征爾さん指揮のオーケストラ公演でした。NHKに入局してからも、科学番組などを制作しながら、趣味として折にふれコンサートに足を運んでいたのです。

2020年2月末以降、新型コロナウイルスの感染拡大により、多くのオーケストラのコンサートが中止を余儀なくされました。その頃、東京都交響楽団ソロ・コンサートマスターの矢部達哉さんから聞いた「ヴァイオリンを弾く気が起きない」という言葉に衝撃を受けて。演奏家の方たちはみな、練習ですら集まれず、自宅待機を強いられ、孤独を嚙み締めざるをえない状況にありました。

コロナがもたらした“孤独”。音楽を生業にする人も、僕たち市民も心のあり方は一緒だ、と気づきました。そこで音楽を通じて孤独と向き合い、生きる意味を見いだす番組ができないだろうか――と思い立ったのです。

9つのオーケストラに所属する演奏家の方たちのご協力を得て、4月から5ヵ月かけて番組を3本制作しました。それが、『外出自粛の夜に オーケストラ・孤独のアンサンブル』『同・希望編』『明日へのアンサンブル』です。先の2本は、演奏家の皆さんが自宅で行った「孤独の演奏」をインタビューとともに放送したもの。3本目では、緊急事態宣言が明けた後、孤独の音楽を奏でた13人にホールに集ってもらい、素晴らしいアンサンブルを披露していただきました。