「たとえば、『口』という文字を書いてもらうと、下が閉じていない方には、高い確率で2つの共通項がありました。1つは、年齢が60歳以上であること、1つは『最近、物忘れがひどくなって困る』と訴えていることです。 病院で一度診てもらうことを勧めると、病院に行かれた約半数の方は、初期の認知症だと診断されました」
そこで、初期の認知症と診断された人々に、「文字トレ」を、半年から1年の期間をかけて取り組んでいただいたところ、以前と比べて物忘れが気にならなくなったという報告を、数多く受けるようになったといいます。
「そこで『認知症用文字トレ』をよりわかりやすく、説得力にあるものにブラッシュアップしようと考えるようになり、そんな折に出会ったのが、脳外科医の浜崎清利先生でした。〈認知症用文字トレ〉がより多くの方に役立つよう、医学的見地から監修していただけるようにお願いしたのです」
それでは、なぜ文字を書くことが認知症に効果的なのでしょうか。石崎さんと浜崎さんの対談を見てみましょう。
脳科学的にも、文字は認知機能低下のサイン
石崎 私は約20年にわたり、筆跡カウンセラーとして「文字から心理状態を読み解く」研究を行ってきました。
最初に注目したのが子どもの文字でした。のべ2万人を超える子どもたちの文字を診るなかで、文字の特徴に子どもの心理状態が現れることに気がつきました。さらに、8万人以上の大人を診るなかで、「文字に認知症のサインが現れている」ということを確信するようになりました。
そこで次第に医学的なエビデンスがほしい、もっと認知症対策の文字トレをブラッシュアップしたいと思うようになりました。そんな折に浜崎先生との出会いがありました。