浜崎 石崎先生と初めてお会いしたのは、アンチエイジングをテーマに開催された講演会で、ともに登壇者としてご一緒したときでしたね。講演後に石崎さんから、「ちょっとご相談したいことがあるのですが」と声をかけていただいたのがきっかけでした。

石崎 講演会での浜崎さんのお話を伺うなかで、浜崎さんが脳神経外科医であるばかりか、とくに認知症の治療に力を注いでいらっしゃると知って、その瞬間、「ついに出会えた!」と運命を感じてしまいました(笑)。

浜崎 ありがとうございます(笑)。私は私で、石崎さんの活動に関心を寄せていました。なぜならば、脳科学の分野でも、文字と脳の関係性についての研究がさかんに行われているからです。脳科学の世界におけるこれまでの研究で、脳の機能が低下すると文字に現れることがわかっています。脳科学的にも、文字は認知機能低下のサインだと言えるのです。

 

認知症を正しく理解する

石崎 そもそも認知症というのは、脳のどのような状況によって発症するのでしょうか?

浜崎 脳血流の低下が原因の一つです。認知症は脳のどの部分の血流が悪くなっているかによって、「アルツハイマー型認知症」「レビー小体型認知症」「脳血管性認知症」「前頭側頭型認知症」などの疾患に分類されています。

著者の石崎白龍さん(左)と、監修者の浜崎清利さん(右)

 

石崎 認知症は遺伝的な要素が強いと聞きますが?

浜崎 いいえ、それは間違った認識です。遺伝的になりやすい人たちは存在しますが、認知症は生活習慣が主な原因の一つです。 乱れた食生活、睡眠不足、喫煙、お酒の飲み過ぎ、運動不足などにより、誰でも発症する可能性があります。

現在、日本における認知症患者数は約602万人ほどだと言われていますが、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人の700万人が認知症になるといわれています。

石崎 そんなにですか? 日本人の5人に1人が認知症に?

浜崎 ええ。たとえばアメリカは人口でいえば日本の約3倍ですが、認知症の患者数は1150万人。日本は長寿大国であるとともに認知症大国なのです。認知症の典型的な症状には、物忘れなどの「記憶障害」、人や物が正しく認識できなくなる「失認」、今までできていたことができなくなる「失行」、人の名前や時間、季節などがわからなくなる「見当識障害」、「実行機能障害」や「判断力低下」などが挙げられます。