その結果、ようやくたどり着いたのが喉の「ジストニア」でした。ジストニアとは、意思と無関係に筋肉が収縮してしまう病気で、指令を出す脳の過活動によって起こる、と言われています。症状が全身に出るタイプと、字を書こうとすると手が震えて書けなくなる「書痙(しょけい)」などの局所的なタイプとがあり、私は後者。

症状の出る部位はさまざまです。ただ、ギタリストなら指先、ピッチャーならボールを握るほうの手、という具合に、その人にとって命の次に大事なところに出る傾向があるんじゃないでしょうか。

 

首を絞められているような圧がある

私の場合、発声しようと集中すると、声帯の筋肉が過度に緊張して喉がしまってしまうらしいのです。確かに、「用意、ハイ」とカメラが回り始めるとろれつが回らなくなる経験をしていました。ただそれよりも、心因性じゃない可能性があると思うことで、まずは病名を受け入れられたような気がします。

当時の私の喉がどうなっていたかと言うと、ベロの根っこあたりの首筋の両脇に、コリンコリンに丸くなった筋肉の張りができていたんです。ものすごく痛くて、しゃべりにくいと思うときには、これが大きくなって、ぐぐぅと迫ってくる、とでもいうのでしょうか。下顎がひっぱられて、いつも誰かに首を絞められているような圧がある。だから声が出ないし、出そうとするとすごく疲れる。

しかし、病名がわかってからの道のりも長いものでした。というのも、私にとって納得できる治療法が見つからないまま、いまに至るからです。投薬治療からはじめたのですが、これは私に合いませんでした。緊張を和らげるために出される安定剤を飲むと、ぼーっとして思考力が落ちます。仕事にならないから、かえって緊張が増すような気がして。結局、薬はやめてしまいました。

外科手術による根治の可能性も探りましたよ。ただ歌手の場合、バイブレーションやコブシなど細かい発声にまで影響の出ない手術は難しい、とのことでした。

世の中はコロナ禍。舞台やコンサートもどんどんなくなっています。できれば誰にも気づかれないうちに、治したかった。騙し騙し仕事をしながら、何か効くものはないか、治せなくても対処法があれば、と探し続けるしかありませんでした。