心因性の病気とは思いたくなかった

高齢になるにつれ、誰しも声は変わっていきます。歌い手でもない限り、特に気になさらない方のほうが多いのでしょうが、生活習慣が原因で胃酸が食道を逆流する声嗄れとか、声帯萎縮とか。そういう類もすべて調べましたが、どれも当てはまりませんでした。

あちこち病院に行くうち、ストレスが原因じゃないか、と言われるようになりました。でも、「それは違う!」と撥ねつけましたね。自分はストレスからほど遠い人間だと思っていましたし、心因性の病気にかかるなんて、私に限ってありえない。そう思いたいところもあったのでしょう。

試しに「グチのつぼ」というのをスタッフが買ってきてくれたので、他人にぶつけられないことを壺のなかに大声で吐き出したり、日々の不満を日記に書き出したりしたこともあります。でも、そんな自分で認識できるストレスを並べても、声が出るようにはならないだろう、と思いました。

 

たどり着いたのが喉の「ジストニア」

歌手である以上、年齢を重ねればこんな声になるものよ、と諦めるわけにはいきません。歌に影響はなくても、しゃべることが億劫なんて、生活するうえでやっぱり不都合じゃないですか。

私は猛然と喉の病気について調べるようになりました。症状が似ている病気を洗い出して、情報を集めて読み込み、疑問点はお医者様に質問して症状と照らし合わせ、可能性のないものは一緒に消去していく。